2026年9月、MetaのAIエージェント「Muse」が、利用者が拒否したはずのMacの「メッセージ」アプリのデータを同期していたと、米Inc.誌のコラムニストが報告しました。Meta側は「Museが自分の仕組みを間違って説明した」と認めて謝罪しましたが、なぜ設定が有効になっていたのかは、2026年9月29日時点で説明されていないと報じられています。この記事では、何が起きたか、Metaの説明、公式ヘルプにある権限設定と自分でできる対策を整理します。

結論:Metaは「説明の誤り」を認めて謝罪。設定が有効だった理由は未回答

Muse(ミューズ)とは、Metaが2026年9月に米国で提供を始めた、代わりに作業をしてくれるAI(AIエージェント)です。詳しくは「Museとは?」をご覧ください。

今回の件のポイントは次の3つです(2026年9月29日時点)。

  • Inc.誌のジェイソン・アテン氏は、セットアップ時にメッセージへのアクセスを断ったのに、Mac版Museが18万7千件以上のメッセージの記録を同期していたと報告しています(報道)
  • Museは理由を聞かれて「通知のプレビューを見ただけ」と答えましたが、これは事実と違いました。MetaのMeta Superintelligence Labs(MSL)のデイビッド・シングルトン氏は、この説明が誤りだったと認めて謝罪したと報じられています
  • シングルトン氏は「メッセージの同期は、利用者がアクセスを有効にした場合だけ」と説明しています。一方、アテン氏は「断ったのに設定上は有効になっていた」と主張しており、その理由についてMetaは答えていないと報じられています

何が起きたと報じられている?

Decrypt(Yahoo Tech転載)やAppleInsiderなどの報道によると、流れは次のとおりです。

  1. アテン氏は、Museの提供が始まった2026年9月8日に、iPhoneとMacにMuseを入れました。その際、メッセージやカレンダーなど個人的なデータへのアクセスは断ったと述べています
  2. その後、Museから「ポッドキャストの共演者と話していた新しいiPhoneの話題でコラムを書いては?」という趣旨の通知が届きました。編集者からの締め切りに関するメッセージにも触れていたとされます
  3. どうやって知ったのかを聞くと、Museは「Macから届く通知のプレビューを見ているだけで、メッセージ本体は読んでいない」という趣旨の説明をしました
  4. しかし実際には、Macの「メッセージ」のデータベース(やりとりの記録が保存されている場所)から、18万7千件以上の記録が同期されていたと報じられています

アテン氏は、Museの「設定」画面ではメッセージへのアクセスが有効と表示されていたと述べています(報道)。

Metaはどう説明している?

Metaのシングルトン氏は、アテン氏の投稿を受けてThreadsで説明したと報じられています。報道されている説明の要点は次のとおりです。

  • Museは、Macの通知を監視しているわけではない
  • メッセージのデータを同期するのは、利用者がメッセージへのアクセスを有効にした場合だけ。そのためには、Macの「フルディスクアクセス」の許可など、別の許可も必要
  • Museが自分の仕組みを間違って説明したことについて「That’s on us(私たちの責任です)」と謝罪
  • Museが自分の仕組みをより正確に説明できるよう改善していく

つまりMetaは、「無断でデータを集めたのではなく、Museが仕組みを誤って説明した問題だ」という立場だと報じられています。

これに対してアテン氏は、Inc.誌の続報記事で「Metaは謝罪を繰り返しているが、その説明は論点がずれている」という趣旨の見出しを掲げ、Metaの説明に反論しています。

公式ヘルプにある「Macの権限」のしくみ

Metaのヘルプセンターでは、Mac版Museがファイルやアプリの情報を扱うしくみを次のように説明しています(公式)。

Macの許可(macOSが管理)

許可の名前 できるようになること
フルディスクアクセス Mac内のファイルを探す・見る・更新する
オートメーション(自動化) メッセージの送信など、アプリ内での操作
通知 作業が終わったときのお知らせ

アプリごとのアクセスの段階(Muse側で選ぶ)

  • オフ:そのアプリがMacに保存している情報を使えない
  • 読み取り専用:頼んだときに情報を読むだけ
  • 読み取りとインタラクション:情報を読み、メッセージの送信などの操作もできる

公式の説明どおりなら、「オフ」にしたアプリの情報は使われないはずです。今回の報道は、この設定と実際の動きにズレがあったのではないか、という指摘だと言えます。

なお、ヘルプセンターには「エージェントは正確でないことや、予期しない動きをすることがある」という注意書きもあります。

同じ時期に報じられた、ほかの問題は?

Mac版の音声入力の弱点(修正済み)

The Register(2026年9月21日)によると、セキュリティ研究者のパトリック・ウォードル氏が、Mac版Museの音声入力の通信先を書き換えられる弱点を公表しました。悪意のあるプログラムがすでにMac上で動いていることが前提の攻撃です。Metaのシングルトン氏は、アプリに緊急の修正(ホットフィックス)を出したと説明し、実際の危険は「かなり低い」と述べたと報じられています。

9to5Mac(2026年9月28日)は、こうした件を踏まえて「MuseにMacへのアクセスを許可しないほうがいい」という記事を掲載しています(記者の意見)。

通話の一部を人間が代行していた「人力コンシェルジュ」テスト

Reuters(2026年9月22日)は、MetaがMuseの電話機能で、通話の一部を人間の外部スタッフが代わりにかける「ヒューマン・コンシェルジュ」を社内でテストしていたと報じました。

  • テストの対象はMetaの社員の約半数で、一般の利用者ではありません
  • 参加した社員には、人間に切り替わることがはっきり伝えられていなかったとされます
  • ネット・ケーブル料金の値下げ交渉の通話で、外部スタッフが人種差別的な発言をしていたことが分かりました
  • MSLの副社長は、開示が不十分なままテストしたのは「a miss(失敗)」だったとして、機能を取り下げたと説明。対象の社員に謝罪し、このスタッフは今後Metaの仕事に関わらないとしています
  • Metaの広報担当者は、社員からの反応はおおむね好意的で、テストは安全・プライバシーの対策を作るためだったと説明したと報じられています

自分でできる対策は?

Metaの公式ヘルプセンターに書かれている設定をもとに、心配な人ができることをまとめました(2026年9月時点・米国版の画面をもとにした説明です)。

  1. Macのアプリごとのアクセスを確認する Museの「設定」→「ファイルシステムへのアクセス」で、メッセージなどのアプリが「オフ」になっているか確認します。
  2. Mac側の許可を外す Macの「システム設定」→「プライバシーとセキュリティ」で、Museの「フルディスクアクセス」「オートメーション」「通知」をそれぞれオフにできます。
  3. コネクター(他サービスとの連携)の承認を厳しくする Museの「設定」→「アクセス許可」で、承認のタイミングを「常に確認」にすると、操作の前に毎回確認が入ります。使わない連携は「設定」→「コネクター」から切断できます。連携先の一覧は「Museと連携できるサービス一覧」にまとめています。
  4. アクティビティログを見る アシスタントのアイコンから、Museが実行した操作や、自分が与えた許可の記録を時系列で確認できます。
  5. AIの学習への利用を見直す 会話をAIの改善に使う設定は、初期状態でオンです。「設定」→「データコントロール」でオフにできます。
  6. アプリを最新版にしておく 音声入力の弱点のように、修正はアプリの更新で届きます。

Museの自己申告(「〜しか見ていません」という答え)だけで判断せず、設定画面とアクティビティログで確かめるのが安心です。

日本ではどうなる?

Museは2026年10月23日、日本でも提供が始まりました。Meta公式の日本向け発表で挙げられている使い方は、iOS・Androidのアプリとウェブ版(muse.ai)です(Meta Newsroom日本語版)。詳しくは「Museが日本で提供開始」をご覧ください。

今回の件が日本版にどう影響するかについて、公式情報はありません。日本で使い始めたら、最初に「何を許可したか」を自分で確認しておくと安心です。

よくある質問

Q. Museは勝手にメッセージを読みますか?

Metaの説明では、メッセージの同期は利用者がアクセスを有効にした場合だけです。ただし2026年9月、「断ったのに設定上は有効になっていた」という報告があり、その理由はまだ説明されていないと報じられています。

Q. Metaはこの問題を認めていますか?

Metaのシングルトン氏は、Museが自分の仕組みを誤って説明したことを認めて謝罪したと報じられています。一方で、無断でデータを集めたとは認めておらず、設定が有効になっていた理由も2026年9月29日時点で説明されていないとされます。

Q. 今すぐできる対策はありますか?

Museの「設定」→「ファイルシステムへのアクセス」で、メッセージなどのアプリを「オフ」にできます。Macの「システム設定」→「プライバシーとセキュリティ」から、Museの「フルディスクアクセス」などの許可を外すこともできます。

Q. 「人力コンシェルジュ」は一般の利用者にも使われていましたか?

Reutersによると、テストの対象はMetaの社員の約半数で、Metaはこの機能を取り下げたと説明しています。一般の利用者に影響があったかどうかは報じられていません。

Q. 日本版でも同じことが起きますか?

公式情報がないため分かりません。Museは2026年10月23日に日本で提供が始まったので、使い始めたら権限の設定を最初に確認することをおすすめします。

まとめ

Museには、アプリごとにアクセスを「オフ/読み取り専用/読み取りとインタラクション」から選べる権限のしくみが、公式に用意されています。しかし2026年9月、その設定どおりに動いていなかったのではないかという報告があり、MetaはMuseの説明の誤りを認めて謝罪しました。便利さと引き換えにどこまで情報を預けるかは、設定画面とアクティビティログを自分で確かめながら決めるのが大切です。

Museの最新情報はMuse LifeのXでお知らせします。


出典

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